第18章 電話越しの梟
「なに言ってんだ、あかーしっ···ムグッ、んー!」
『ぼっくん?どうしたの?』
「あー、ちゃん、何でもないよ。先輩達の分はいいんじゃないかな。」
『んー?そうかな?でも、背番号わからないんじゃしょうがないもんね。』
「俺達の分が増えるだけでも大変でしょ?あんまり無理しないで。」
『わかった。』
「ぶはー!あかーし苦しーって!」
「あ、すみません。」
何かまた後ろからクロちゃんの笑い声が聞こえる。
何か変なことを言っただろうか。
それとも、電話の向こうは何か別のことで盛り上がっているのだろうか。
頭に少しの疑問符をうかべながらも、話を進めた。
『インターハイ予選に応援に行くつもりでいるから、その時に渡した方がいいかな?』
「東京来んのか!?」
『うん、クロちゃんもぼっくんも今年で高校最後だから、やっぱりどうしても見たくて···。』
「よっしゃー!やる気が出るぜー!」
「ちゃんが来てくれるなら、木兎さんのしょぼくれモード減りますね。」
『でも、音駒と梟谷が当たったら、音駒を全力で応援しちゃうからねー。』
「なにーー!!」
「当たり前でしょ。おれ達のなんだから。」
「今は音駒じゃないけどね。」
「うるさいな赤葦。」
「まぁまぁ、梟谷のお二人さん。俺達音駒と当たったらの応援は期待しないでちょーだいね。」
「うがーー!!!」
『はははっ。』
少し話が逸れてしまった。
研磨とクロちゃんのお守りは、最初から東京に行った時に渡すつもりでいた。東京には試合の始まる前日には行くつもりでいるし、研磨のママに聞けば、東京にいる間は研磨の家にお泊まりしてもいいと言ってくれている。2人にはしっかりと渡すことができるけれど、ぼっくんと京治くんはどうだろう。
あの人がたくさんいる体育館の中で、試合前にぼっくん達を探してお守りを渡せるだろうか。
どこもかしこも色んな色のジャージを来た沢山の人で溢れかえっているあの場所で見つけられるんだろうか。試合の控えている研磨とクロちゃんに迷惑をかける訳にもいかないし、自分でどうにかしなくてはいけない。
そうなるとやっぱり会場で渡すのは不安だ。