第18章 電話越しの梟
『京治くん、京治くん。会場で会えるかわからないし、迷惑かけちゃうといけないから、お守りやっぱりぼっくんのも一緒に京治くんのお家に送ってもいい?』
「迷惑だなんて、そんな。でも、ありがとう。会場は人も多いからね。」
『クロちゃんーは、またイタズラするといけないから、研磨のスマホから京治くんのお家の住所送ってもらってもいい?』
「うん。了解。」
「心外だなぁちゃん。」
『たった今京治くんと研磨に迷惑かけてるんでしょー!…すぐにお守り作るから、待っててね。』
「、ありがとなー!」
「ねぇ、もう用事済んだでしょ?静かにゲームやりたいから帰ってよ。」
「そうだね。弧爪、木兎さんが煩くして悪かったね。」
「ん。まぁ、赤葦がいてくれてまだ良かった。」
「じゃあ、ちゃん、またね。お守り楽しみにしてる。…木兎さん、行きますよ。」
「えーー、とまだ話したいー。」
「番号聞いたんでしょ?これからいつでも電話できますから。」
「あ、そっか!じゃあな」
『うんっ、2人ともまたね。研磨とクロちゃんもまたね。』
「おー、またな。」
「また電話するから。」
ざわざわと音がした後、プツリという音と同時に、電話の向こうから機械音が聞こえる。
スマホをテーブルに置いて、会話を思い出して思わずふふっと笑みがこぼれた。
元気そうで良かった。
それに、相変わらず仲が良さそうで、まるで東京にいたころみたいだった。
変わらない関係性に、何だか安心すると同時に心が温かくなった。
こうして宮城にいても、気にかけてくれている存在がいるということはとても幸せなことだと思った。
嬉しい気持ちをこうして分けてもらった分、私も彼らにそれ以上のものを返したい。
手を止めていたお守り作りをまた再開する。
あぁ、心がポカポカ温かい。
頭に浮かぶみんなの笑っている顔。
今度こそ、集中して縫うことが出来そうだ。
一針一針進めていく自分の手元を見ながら、どんどんと出来上がっていくそのお守りに、ただ負けないでほしいと心から祈り続けた。