第18章 電話越しの梟
『木葉くん達も元気?雪絵ちゃんとかおりちゃんはっ?』
「ははっ、皆元気だよ。ちゃんが宮城に引っ越したって聞いて驚いてた。木兎さんのしょぼくれモードが減るから音駒じゃなくて梟谷に来てくれたらいいのにって皆言ってたんだけど。」
『パパが宮城県の病院に呼ばれて引っ越すことになっちゃったの。皆と遊べなくなっちゃって寂しい。』
「俺も寂しいよ。」
「ちょっと!あかーし!」
京治くんと喋っていると、突然ガサゴソと音が聞こえてきた。
何となく後ろから聞き覚えのある大きな笑い声も聞こえてくる。
「あっ、ちょ、木兎さん。まだ喋ってますから。」
「俺がやっっと黒尾から番号聞き出したんだから、俺がと喋りてーの!」
『ん?やっと?···ねぇねぇ、さっきから聞こえてくる笑い声ってクロちゃん?今なにしてるの?』
電話越しにぶひゃひゃひゃと聞こえてくる、聞き慣れている幼馴染みの笑い声。ぼっくん達の声より遠くから聞こえるけれど、この笑い声は絶対にクロちゃんだ。クロちゃんの笑い声を私は聞き間違えない。
ぼっくんとクロちゃんがとっても仲良しなのは知っているけれど、今はどういう状況なんだろう。
それに、ぼっくんがやっと番号聞き出したって言った。
確かに、クロちゃんからGW合宿の時にぼっくんから携帯番号を聞かれているから教えてもいいかと聞かれた。
でももうGW合宿から結構な日数が経っている。
「黒尾の奴が、孤爪にゲームで買ったら番号教えてやるっつーから、孤爪ん家でゲーム!」
『研磨の家っ?』
後ろで笑っているクロちゃんの声が少し大きくなった。
「孤爪ゲーム強えーから、全然勝てねーの!」
『え?でも電話······研磨に勝ったのっ?』
「木兎さんと赤葦が何回も来るからわざと負けたんだよ。」
『研磨っ!』
「クロが余計なこと言うから、おれが大変だった。追い返そうとしても全然帰ってくれないし。」
次いで聞こえてきた研磨の声。
でもとっても機嫌が悪そう。クロちゃんのことだ、きっと面白がってこんなことしてるんだ。
ニヤニヤと笑みを浮かべるクロちゃんの顔が目に浮かぶ。
『もー、クロちゃん!』
クロちゃんの笑い声がピタッと止んだ。