第18章 電話越しの梟
~♪~♪~♪
『ん?』
布団の上で、クッションを抱きしめたままゴロゴロしていると、枕元に置いていたスマホから着信音が聞こえてくる。
知っている人から電話がかかってくると特定の音楽が流れるようにしているのだけれど、それとは違う聞きなれない音。
慌てて手を伸ばして画面を確認してみると知らない番号だ。
知らない番号の電話はあまり出たくないけれど、もしかしたら知っている人かもしれないし。
見たところ奇抜で変な番号という訳でも無さそうだ。
知っている人だったら出ないのは申し訳ないから、もし出てみて変な人だったらすぐに切ろう。
そう思い立って少しだけ迷った後、通話開始のボタンをタップする。
恐る恐る耳元にスマホを近づけると、耳をスマホに付けきる前に向こう側から大きな声が聞こえてきた。
「へいへいへーーい!!!」
『わっ。』
驚いて思わず耳から離してしまったけれど、向こう側から聞こえた声とセリフはとても聞き慣れたものだった。
前に会った時と変わらないその元気な声に、自然と顔が綻んだ。
『ぼ、ぼっくんっ?』
「おう!!ーー!元気にしてたかー!?」
『うんっ。わぁ···ぼっくんだ、ぼっくんだっ。』
電話の向こう側。聞き慣れたその声の持ち主は梟谷学園高校のエース、ぼっくんこと、木兎光太郎くんだ。
「ちょっと木兎さん、そんなに大きい声で喋ったらちゃん驚きますよ。」
『あれ?京治くんもいるの?』
「おー!」
ぼっくんの声の少し向こう側に、もう1つ聞き慣れた声がする。
ガサゴソと少し音がする。
スピーカーに変えてくれたのだろうか?
確認の為に何となく躊躇いがちに京治くん?と声を掛けてみる。
「ちゃん久しぶり。元気そうで良かったよ。」
『うわぁ、京治くんっ。京治くんも元気にしてた?』
「うん、相変わらず木兎さんと一緒にバレーしてるよ。」
やっぱりもう1つの聞き慣れた声はぼっくんを支える、梟谷学園高校のセッター赤葦京治くんだ。
『ふふっ、そっかぁ。良かった。』
優しい京治くんの声で穏やかな空気が流れて、こちらまで穏やかな気持ちになる。
久しぶりに聞いたその変わらない声に、自然と笑みが零れて胸が温かくなった。