第17章 薄紅葵のティータイム
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『っうわぁ。…綺麗なお花がいっぱいっ。及川さんっ、凄いですっ。』
「でしょー。」
DVDを貸してあげると、そう言われてからすぐ、青葉城西高校を出て及川さんに連れられてやってきたのは、学校から少し離れた所にあるお洒落で大きな庭園のあるカフェだった。
暖かな季節ということもあって、色とりどりの花が咲き乱れている。
桃色のバラのアーチ。
庭園の一角にある池には睡蓮の花も咲いている。
カスミソウにカンパニュラにバーベナも。
オリーブの木が作り出している心地よい日陰に入ると、吹いてくる風が心なしか冷えて感じてそれがまた心地いい。
手を広げて肺いっぱい空気を吸い込むと、沢山の草木から香る緑の香りが鼻をくすぐる。なんていい匂いなんだろう。
『でも、あの及川さん。私がお願いをした立場なのにこんな素敵なところに連れてきてもらって良かったんですか?』
私の少し後ろを歩く及川さんに聞いてみる。
「もっちろん!俺がちゃんと一緒に来たかったの。だってほら、とってもいい天気でデート日和でしょ?」
『で、デート…。』
恥ずかしくなって、熱を持った頬を隠すように手を当てた。
なぜ、試合のDVDを借りに来たはずの私が、急にこんなところに来ることになったのかというと、DVDを貸してくれると言った及川さんが、その代わりに今日1日デートに付き合ってほしいと、そう言ってきたからだ。
私のお願いを聞く代わりに、及川さんのお願いを聞く形になったというわけだ。
連れていきたい所があるから着いてきて欲しいと言われて、連れて来てくれた先がここだった。
庭園の奥にある、木造りのカフェへと一旦入って及川さんが店員さんに声をかけてくれる。
せっかくいい天気だから外に座りたいと店員さんに言うと、庭園に設置されたテーブルに案内された。
まるでファンタジー映画の世界にでも入ってしまったみいだ。
沢山の緑に囲まれて、思わずキョロキョロと見渡していると、目の前に座った及川さんの笑い声が聞こえてきた。
「ははっ!ちゃんに喜んで貰えて良かったー!連れてきた甲斐があるよ。···あ、でさ、ちゃんて、ハーブティーとか飲める?オススメがあるんだよねー。」