第16章 夕暮れの微熱
もしかしたら、持病なんかがあるのかもしれない。
こんなことなら、もっとしっかり聞いておくべきだっただろうか。
彼女の側にいたいなら、もっと気遣ってやるべきだっただろうか。
後悔が押し寄せるけれど、いつまでもこうしているわけにもいかない。早く彼女を家に連れて行かなければ。
を横抱きに持ち上げる。
あまりにも軽くて、ちゃんとご飯を食べているのか心配になる。
僕が言えたことじゃないけど、今度ちゃんと聞いてみよう。
家までの距離が近くてよかった。
を抱きかかえて歩き始めて数分、すぐに家に着いた。
祈るような気持ちでの家のインターホンを鳴らす。
彼女の両親が仕事で不在がちだというのは常々聞いていたからだ。
お願いだから誰かいてよ。
インターホンを鳴らして、少しのあとガサガサッという音の後にインターホンから女の人の声が響いた。
「はーい。」
あぁ、良かった。いてくれたと安堵する。
この声はのお母さんだ。
「っ月島蛍です。撫子さんっ、さっきそこでが倒れてっ。」
「っちゃんが?すぐに行くわ。」
インターホンがガチャリと切られた音のすぐ後、玄関が勢いよく開かれた。
「ちゃんっ。」
すぐに様子を見に来た撫子さん。
の様子をさっと見ると、ほっと息をついた。
「そんなに熱は高くはないみたい。…蛍くん連れてきてくれてありがとう。申し訳ないんだけど、ちゃんを部屋まで運んであげてくれる?」
「あ、はい。もちろん。…、大丈夫そうですか?」
の家の玄関を潜りながら訪ねる。
「そうね見た感じ。もともと丈夫な子では無かったから…環境が変わって、疲れが出ちゃったのかしら。」
階段を上がって、猫のプレートの掛けられた扉を撫子さんがそっと開けた。
「蛍くんがいてくれて、本当に良かった。ありがとう。」
「いえ。」
部屋の奥にあるベッドにを横たえる。
呼吸が浅くて辛そうだ。思わず頭をそっと撫でた。
「お礼にお茶でもどうぞって言いたいところだけど、時間も遅いものね。また後日お礼をさせてちょうだい。」
「あの、おかまいなく。」
「そんなこと言わないで、お母さまにもお礼を言いに行くわ。」