第16章 夕暮れの微熱
side 月島 蛍
合宿が終わった後、いつも通り山口とと帰り道を歩いていた。
ふと感じた違和感。
いつもなら、山口とが他愛もない話で盛り上がるのを僕が横で聞いているのが常であるのに、の声が聞こえてこない。
その違和感を感じていたのは僕だけじゃなくて山口もだったようで。
それをに尋ねてみるけれど、その返事はやっぱりどこか彼女にしてはおかしくて。
山口と別れて、2人で歩き出してからもやっぱり違和感が続く。
というよりもどんどん増していた。
少しも喋らないし、どこか俯いた顔。そしてふらついた足。
やっぱりおかしい。
「ねぇ、本当に大丈夫なの?」
そう彼女の顔を覗き込んで訪ねてみれば、何となく赤く染まった頬、潤んだ瞳。
彼女の歩みを腕を掴んで止めさせて、のおでこに手を当ててみる。
「…あつっ。ちょっと、何か変だと思ったら熱あるじゃん。何で言わないのっ。」
彼女に触れた手が感じた温度は明らかに普通の体温では感じることが無い程熱くて。
手にそっと触れた彼女の吐息すら、熱く感じる。
人のことには敏感に気が付くくせに、どうしてそんなに自分のことには鈍感なの。
僕がどうしようかと眉根を寄せていると、ぎゅっと僕の服が握られた。その手は心なしか震えているようで。
家までの距離はあとほんの少し。大丈夫かと問いかけてみれば弱弱しく大丈夫と帰ってきた。
けれど、服を握る手はどんどんと強くなる。ふらふらと安定感のないの体を腕をもって支えてみる。
やっぱり大分辛そうだ。
『…がんば…る。』
一言そう漏らすと、ぎゅっと僕の服を掴んでいた手が離された。
多分、歩いて帰ろうとしたんだろう。けれどその足は前に伸ばされることはなく、の体が前に傾いだ。
「ちょっ…っ。」
とっさに腕を回して彼女が倒れないように支える。
倒れこんでしまわないようにそっとしゃがんで彼女の様子を伺うけれど、どうやらもう意識がないようだった。
「っ。」
もう1度おでこを触ってみるとやっぱり熱い。他人の熱をこんな風に測ったことがないからどれくらい熱がありそうなのかもわからない。
確か彼女は身体が弱かったと言っていなかっただろうか。