第15章 練習試合 対音駒高校戦
試合終了後、後片付けをしながら2校の選手がお互いに交流しているのを見て、思わず頬が緩む。
特に日向くんと犬岡くんは気が合ったみたいだ。ピョンピョン飛んでいる姿が何とも可愛いと思ってしまった。
衛輔くんはスガ先輩や西谷選手と話しているし、ここからは田中先輩と虎くんが話しているのも見える。
あと、研磨が影山くんから逃げているのも。
『ふふっ。』
烏野も、音駒も、どちらも好きだ。
見守りたい気持ちは変わらない。それでも、クロちゃんと研磨とは片付けが終わればさよならしなければいけない。また心臓の辺りがぎゅっと痛くなる。
使っていたタオルを畳み終えて、重い腰を上げる。
ドリンクのボトルを洗いに行かなくては。
立ち上がって、体育館にいる皆を見回した時だった。
ふと後ろから感じた気配。振り返ろうとしたけれど、すぐ耳元に声が響くと同時に背中に大きな温もりを感じる。
「、なーに考えてんの。」
『っクロちゃん?』
「試合始まる前からおかいしいだろ?どうした?」
『そ、そんなこと···。』
「隠すな。何年一緒にいると思ってんの。そんな顔のお前放って帰れるわけないでショー。」
振り返って顔を見上げた私に、クロちゃんはそう言うと、私の手とドリンクのボトルの入った籠を掴んで急に歩き出した。
『ぇ?ちょっ···。』
「柴山ー!ちょいボトル洗うの手伝ってくるなー。」
『クロちゃんっ。』
「いいから来い。」
足早に向かった給湯室。着くなりクロちゃんはボトルの入った籠を下ろすと、トンっという音を立てて私の顔の横に両手をついた。
顔の横に、クロちゃんの手があるのが横目で見える。とてもじゃないけれど逃げられそうもない。
『ぁ、ぁの。クロちゃん···。私、変な顔してた?』
「んー?寂しくてしょうがないデスーって顔?」
『うっ。』
クロちゃんはいつもそうだ。
私がモヤモヤ考えていると、すぐにこうして捕まえに来る。
どうしてだろうって研磨に相談したら、顔に出てるからって言われた。あれ?顔に出てるって研磨が思ってるってことは、研磨にもモヤモヤしてるのバレてるってことだ。
あれ。頑張って顔に出ないようにってしてた筈なのに恥ずかしい。
少し顔を上げると、すぐ側にあるクロちゃんの三白眼と目が合う。