第15章 練習試合 対音駒高校戦
「はどう思う?」
『へっ?···わたし?』
最初クリア出来ないゲームでも、繰り返すうちに慣れるんだよ。と、日向くんを止めるために、チームで1番早い犬岡くんがひたすら日向くんを追いかける。という攻略法を持ち出した研磨の話を聞いていると、ふいに話が私に振られた。
『で、でも。』
「いーじゃねーの。今日は音駒のマネージャーだろ?」
クロちゃんに頭をワシワシと撫でられる。
烏野のマネージャーである私が口を出してもいいのだろうか。
皆の顔を見回してみると、いつも通りのニコニコした顔が私を見つめている。それは、以前私が音駒に手伝いに行っていた時と変わらないもので。そのことにやっぱり嬉しくなりつつも、それならばと私は口を開いた。
『研磨が慣れるって言うなら慣れると思う。最初は、コミットブロックで日向くんに1人に誰かついた方がいいかなと思ったけど、それならデディケートシフトで、リードブロックを徹底して、日向くんに上がったらすぐに犬岡くんが止めるっていうのがいいと思う。それなら、他のブロッカーは、日向くん以外の人に注意を向けていられるから。』
「うん、おれもそれがいいと思う。翔陽は、見た感じ単純にブロッカーのいないところに真っ先に突っ込んで行ってるから。」
『そっか···。それじゃあ、尚更デディケートシフトは有効だね。日向くんが突っ込んでくる位置を限定出来るもんね。』
「うん。」
「うし!じゃ、次はデディケートシフトで行くぞ。···お前ら、やっぱ最高だな。」
話を聞いていたクロちゃんが、私と研磨の頭を撫でた。
研磨の嫌そうな顔を見て、笑みがこぼれる。
「研磨とちゃんが揃うと恐ろしいな。本当お前ら凄ぇよ。」
続いて衛輔君にも頭を撫でられる。
こうして、研磨と色々考えるのは楽しい。クロちゃんに褒められるのも、皆に褒められるのも嬉しい
それでも、素直に心から喜ぶことが出来ないのは今私が本当は烏野のマネージャーだからだろうか。
それでも、試合に戻る皆に暗い顔なんて絶対に見せられない。
コートに向かおうとする皆に、精一杯笑う。
『そろそろタイムアウト終わりだね。皆頑張ってね。』
背中を向けた皆の背中をトントンっと1人ずつ叩いていく。
みんなをコートに送り出すこの瞬間が好きだ。
凛々しい皆の背中がかっこいいから。