第15章 練習試合 対音駒高校戦
私がベンチに戻ってすぐに練習試合は開始された。さっきの賑やかな雰囲気から一転、コートに立つピリピリとした雰囲気の皆はやっぱりかっこいい。
試合は、研磨のサーブ、そして、強烈な日向くんの速攻で始まった。少し驚いたような表情をしている研磨だけど、狼狽えた様子は微塵もない。
きっともう、どうやって烏野を攻略するか頭の中で色々と考えている。
烏野に入って、改めてこうして敵側の立場から見ると、何だかまた新しい発見があるような気がした。
日向くんの速攻は、やっぱりこちら側から見るととても強烈だ。トスが上がったと思ったら日向くんはもうスパイクのモーションに入っている訳だから、その上げられたボールがこちらのコートに来るまでの時間はコンマ何秒の世界だ。
ここから見ても、目を瞑ってスパイクを打っているのが見えるのだから、初見での印象は凄まじいものだと思う。現に、隣で猫又監督が「ありゃとんでもねぇな。」とボヤいているのが聞こえる。
日向くんの速攻が決まると言うことは、田中先輩と旭先輩のマークが薄くなると言うこと。そうすると、2人のスパイクも決まりやすくなる。西谷先輩がチームに入ったことも大きい。
安定したレシーブは、安定した攻撃に繋がるからだ。やっぱり、烏野はきっと強くなると音駒側から見ても思う。
とは言え、穴のない守備など存在しない訳で。
私なら、どう烏野を攻略するだろうかと考える。やっぱり最強の囮である日向くんを止めるのが得策だろうか。そうすると、日向くん1人にブロッカーを常に1人つけるコミットブロックか。
それとも、横幅に動く範囲を狭くする意味でデティケートシフトを使うか。
うーん。と考えていると猫又監督が1回目のタイムアウトをとった。気づけば、1セット目も中盤に来ていたようだった。
集まってくる皆にドリンクとタオルを渡す。
集まって来た皆の話の内容は、やっぱり日向くんをどうするかということだった。ベンチ側から見ても強烈なのだから、コートで対峙している皆にはもっと衝撃的だっただろうと思う。
ここまでのタイムアウトまではほんの合計20点程度。それでも、研磨は日向くんをどう攻略するか、もう決めているようだった。
研磨の目が、ゲームを攻略する時のように獰猛に光って見えた。