第15章 練習試合 対音駒高校戦
ベンチに集まってきた選手達に、猫又監督が一言二言話すと、すぐにクロちゃん達はコートへと入っていった。
その背中を見送って、ベンチに腰掛けようとした時だった。
コートの中で、皆が集まって円陣を組んでいる。
円陣なんて今まで組んだことがあったっけ?なんて考えていると、皆の視線が一気にこちらに集まった。
『な、なに?』
訳が分からず動けないでいると、クロちゃんがチョイチョイっと指先を動かして手招きしているのが見える。
どうかしたのだろうかと、近寄ってみると研磨とクロちゃんの間をスっと空けられて間に収まるようにクロちゃんに背中を押される。
「あー、右手出して····そーそー。んでグーにして。」
言われるがまま、右手を出してグーにする。
すると、私の手の周りに皆の手が集まって来る。全部で8人分集まるとクロちゃんが話し始めた。
「俺達は血液だ。滞りなく流れろ、酸素を回せ。”脳”が正常に働くために。行くぞ!」
クロちゃんが言い終わると、アす!!と口々に聞こえる。
こんな風に円陣を組むなんて、いつぶりなんだろう。
何だか嬉しくて背中がそわそわする。
「ねぇ、クロ。やっぱり今のやめない···?なんか恥ずかしい···。」
「なんで!いーじゃねぇか!雰囲気雰囲気!」
「自分らへの暗示みたいなもんだ。」
「···ということだ。···なぁ、いいだろコレ。」
「え、に聞くの?」
『うんっ!かっこいい!クロちゃんが考えたの?脳って研磨のことでしょ?···滞りなく流れろ···かっこいい!』
「だろ?」
「ほらってこういうところ、ちょっとズレてるよ。カッコイイのハードルが低すぎると思う。」
隣にいる研磨に頬をツンツンとつつかれる。
なんで、かっこいいよ!研磨を中心に、レシーブで支えている今の音駒のスタイルに凄く合っている。血液だ···とか、かっこいい。
「ぶひゃひゃっ。まぁ、カッコイイのハードルが低いから木兎のことヒーローとか言っちまうんだよな。」
『ぼっくんはかっこいいよ!梟谷のエースだもん!』
「おやおやー。ちゃんは木兎にお熱ですか?」
『そういうんじゃないの!もー!あっち戻るからね!···試合、頑張ってね。』
ケラケラと笑っているクロちゃんを放って、私はベンチに戻った。