第15章 練習試合 対音駒高校戦
『猫又監督っ。』
「あぁ、ちゃん。久しぶりだねぇ。少し見ない間に、またべっぴんさんになったねぇ。」
『ふふっ、ありがとうございます。』
「今日は、こっちを手伝ってくれるんだって?」
『はいっ。武田先生に言われて。今日は1日、音駒バレー部のマネージャーやりますね。』
「はっは。そうかそうか。それは有難いねぇ。」
猫又監督は、クロちゃんがバレーを好きになるきっかけをくれた人。穏やかだけれども、鋭い爪を隠し持つ、猫のような人だ。
優しい猫又監督は、子供の時に研磨とクロちゃんのバレーを見てくれたり、中学の時に監督として教えに来てくれたりと、2人のバレー生活に大きな影響を与えた人だ。
そして、2人にくっついていた私にも、とても優しくしてくれた、本当のおじいちゃんみたいな人。
「ちゃんの引越し先がまさか烏野とはねぇ。」
『音駒高校と烏野高校は因縁の相手だって先生が言ってました。』
「そうそう。前の監督の鵜飼とは色々あってね。今日はその孫が監督してるって言うじゃないか。楽しみだねぇ。」
『ふふっ。そうですね。』
「してちゃん。烏野のバレー部の面々は、ちゃんからどう見えている?」
『私からですか?んー。面白いチームだと思います。不確定要素が沢山というか。未知というか。今までに見た事が無い感じです。···あっ、監督、私から情報聞き出そうとしてもダメですよー!』
「はっは。ちゃんは厳しいね。」
『今は烏野のマネージャーですからね!今日は私が、音駒から色々な事お持ち帰りする予定ですからっ。』
「おーおー。怖いねぇ。···それにしても、ちゃんから未知なんて言葉が出るとはねぇ。研磨と一緒で分析するのは得意だろう。」
『だってね、猫又監督!全然見たことない速攻···が···。監督っ、私から色々聞き出そうとしちゃダメ!喋っちゃうからっ。』
「はっはっは!分かった分かった。」
私が慌てて両手で自分の口を塞ぐと、監督は腕を組んで豪快に笑った。
元気そうで本当に良かった。
猫又監督の笑う姿を見て、こちらの頬も緩む。
「さて。そろそろ試合だね。」
会話の切れ目と同時に、スっと立ち上がった猫又監督。
それを合図に、音駒の選手達がベンチに集まってきた。
ついに試合が始まる。