第15章 練習試合 対音駒高校戦
2人して手で顔を覆ってそっぽを向いてしまった。
どうしたんだろう、と考えている間に研磨のテーピングは終わった。
『終わったよ。どう?動かしてみて?』
「うん。大丈夫、全然違和感ない。」
『良かったー。じゃあ研磨はコートの準備行ってらっしゃい。次はー、クロちゃん!』
「はいはい。」
コートの準備に向かう研磨の背中を見送って、次は研磨と同じようにベンチに跨って座ったクロちゃんの両手をキュッと掴む。
『クロちゃんもテーピングしてないよね?』
「してないしてない。どーも、のテーピング以外じゃ違和感あってダメなんだよなー。」
『んー、クロちゃんは研磨みたいに乾燥あんまりしてない。やっぱり体質かな?····でもハンドクリーム塗ってあげようか?薔薇のやつ。』
「俺から薔薇の匂いって気持ち悪くない?」
『ははっ。どうかな···って言ってる間に塗っちゃう!』
またチューブからクリームを出してクロちゃんの指にも塗っていく。うん、薔薇のいい匂い。
『ふふっ、クロちゃんも薔薇のいい匂い。』
「あ、ほんと。の匂いだわ。」
『じゃあ、テープ巻くね。』
「おー。」
クロちゃんの大きな手にテープを巻いていく。キツくならないように、シワが出来ないように。違和感なく指が曲げられるように丁寧に。
『はい、出来上がりー。』
「相変わらず仕事が早いし丁寧だな。烏野に行っちまったのが悔やまれる。」
クロちゃんは、手をグーパーグーパー動かすと、その手で次は私の頭を撫でた。
『ふふっ、ありがと。あ、····ほら、衛輔くんが早く手伝えって顔でクロちゃん見てるよ。私も、試合が始まるまでにドリンク作ってくるね。』
「んー。ありがとな。」
『武田先生の頼みだからね!今日は任せて!』
クロちゃんがコートの準備に行く背中を見送ってから、私もドリンクを作る為に給湯室へと移動した。