第15章 練習試合 対音駒高校戦
ふと、後ろに足音と気配を感じる。
『澤村先輩。』
振り返るとそこには澤村先輩が。
「烏野主将の澤村です。今日はよろしくお願いします。」
「音駒主将の黒尾です。こちらこそよろしくお願いします。」
主将であるクロちゃんと挨拶をしに来たみたいだ。
握手された手に、何となくピリピリとしたものを感じる。
澤村先輩も来たし、そろそろ戻って潔子先輩とドリンクの準備をしないとと、足を踏み出した時だった。
「あぁ、それと。」
ふいにクロちゃんに腕を引っ張られる。
よろけた私を支えると、クロちゃんは私の肩をぎゅっと抱いて言葉を続けた。
「”うち”のがお世話になってます。」
「いえいえ。」
『クロちゃん?』
顔を見上げると、ニヤっと笑った顔と目が合う。
『私、そろそろ準備しに行かなきゃ。』
「あぁ、はいはい。」
「あ、さん。武田先生が、音駒高校は東京から来て人数も少ないし、慣れてるさんが補助してあげてって。だから、今日はそっちに着いてあげてくれる?」
『へ?あ、はい。わかりました。』
「ってことで、”うち”のさんをよろしくお願いします。」
「ははっ、言うねぇ。お気遣い有難うございます。んじゃま、行きますか。」
挨拶が終わると、クロちゃんに背中をそっと押される。
荷物を抱え直して、球技場へと移動する。
『取り敢えず荷物を球技場に置いて。皆テーピングは?する?』
「んー、俺は大丈夫かな。」
「お、俺も!大丈夫っす!!」
『海くんと虎くんは、テーピングなし。研磨とクロちゃんと衛輔くんは?』
「んー。してもらおう、かな。」
「お願いしまーす。」
「俺はいいや!」
『じゃー、研磨とクロちゃんはドリンクの準備が終わったらテーピング巻くね。』
「うん。ありがと。」
『テーピングする代わりにしっかりリサーチさせて貰います!』
眼鏡は掛けていないけれど、眼鏡を上げる仕草だけ付け加える。
ニヤっと笑ってみると、クロちゃんも同じようにニヤっと笑った。
「ちゃっかりしてんね。」
『今は烏野のマネージャーだからね。』
お喋りしていると、あっという間に球技場についてしまった。
何だか懐かしいこのやり取りに、やっぱり嬉しくなる。
さて、ここからは私もしっかりマネージャーの仕事をしなくては。