第14章 ベンチに座るということ
コクコクと何度も頷くちゃん。
泣かせてしまってごめんね。
でも、これは必要なことだった。
スガと同じ、ベンチに座ることを諦めた訳じゃない。
今、勝つために最善だと思う道を選んだだけ。
ベッドに2人で入って、どちらともなく小さな声で話し出す。
「ちゃん、今日日向と一緒に迷子になったんだって?」
『潔子先輩、聞いたんですか?』
「ふふっ、うん。スガから聞いちゃった。」
『私、日向くんを探しに行った筈だったのに····恥ずかしいです。あ、でも、幼なじみとばったり会ったんです。』
「そうなの?凄い偶然ね。」
『はい、私も驚いちゃいました。····あっちも迷子になってて、びっくりしてました。』
「ふふっ、そう。」
取り留めのない話をお互いに話す。
ちゃんはもう、ベンチ入りの話はしなかった。
多分、彼女は気づいていた。
例え私が何を言われても、意見を変えることは無いということ。
本当に、聡い子。
その日の夜は、何時にどっちが先に寝たのかもわからないくらい沢山話して、2人とも自然に眠りに落ちていた。
虫の音も、車の音も、何も聞こえない静かな夜はこうして更けていった。