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Gerbera~原作沿い長編~【ハイキュー】

第14章 ベンチに座るということ




凄い覚悟だと思った。



ずっとずっと怖かった。
皆と同じ気持ちで立って、また呆気なく終わってしまったら。
澤村に、バレー部のマネージャーに誘われて、何となく入部して、最前線で戦わなくていいと安堵していた私。


それでも、ねぇ、私もちゃんに感化されたみたい。
呆気なく終わるのがなんだ。あっさり終わるのがなんだ。
それでも皆頑張っている。
そして私も、皆と同じように、1試合でも多く少しでも長く皆がコートに立っていられる為の努力をしたい。

ここは私にとっての最前線でもあったのだ。

今の私が、皆の為に出来る最善は、1つでも多く勝つ為に少しでも力になれるちゃんにベンチを譲ることだ。

人の機微に聡い、優しいちゃんのことだ。
きっと、困惑するだろう。

それでも··········。







昨日と同じように、一緒にお風呂に入ってちゃんの髪の毛を乾かした。
フワフワとしたその髪の毛に、櫛を通す。
部活中に記していたノートを熱心に見つめる彼女に、自然と頬が緩む。本当にこの子は、一生懸命なのだ。


「ちゃん。」

『はいっ、潔子先輩。』

にこにことした顔の彼女と、鏡越しに目が合う。

「ちゃん、お願いがあるの。」

『え?····は、い。』

変わった部屋の空気に、ちゃんが不安そうな顔をしている。櫛を通していた手を止めて、近くにあった勉強机から椅子をコロコロと転がしてくる。ちゃんの隣で椅子を止めて、そこに座る。

『潔子····先輩?』

「今度の公式戦。···ベンチにはちゃんに座って欲しい。」

『····え?···潔子先輩···なにを···。』

困った様な、今にも泣いてしまいそうな、そんな顔のちゃんに思っていたことを全て伝える。
静かに、全部聞いてくれたちゃん。時折相槌をうって俯いて。そして、ポロリと零した小さな涙に、彼女の大きな優しさが詰まっているような気がした。


「泣かないでちゃん。私もね、月並みな言い方かもしれないけど、これからもっともっと頑張る。皆が少しでも長くコートに立っていられるように。だからちゃん、これからも一緒に頑張ってくれる?」



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