第4章 友達
「お菓子。くれたら通してあげてもいいよ」
『…ほんと、バスケ部にはロクな奴がいないわね。あなた、手作りでも食べれる?』
あの子は鞄をゴソゴソと漁り、タッパーを取り出した。その中にはクッキーが入っていた。
手作りって言ってたっけ。まるで売り物みたい。
「…これ、くれるの?」
『…あたしなんかの手作りなんて嫌かもしれないけど、これしかないのよ。これで我慢して…え?』
俺は言い切る前にそのクッキーを食べた。市販のモノとは違って甘すぎず硬すぎず、サクサク感が丁度いい。
一言で言うと…
「…美味しい」
『…はやっ』
「あらら~、もうなくなっちゃった。ねぇちん、また明日も作って来てよ」
『…は?』
「お願いね~」
『ちょ、待って紫原敦!』
急に名前を呼ばれて、思わず立ち止まった。
ちんのあんな大きくて切羽詰まった声なんて初めて聞いたから。
ていうか、まともに話した事も初めてだけど。
『明日は…無理』
「…え?」
『今日の夜、ちょっと忙しくて…明日の夜なら暇だから…その時、作る』
「…え、うん。ありがとう…」
『じゃあね』
ちんは走って行ってしまった。
俺は噂とか気にしないけど、それでも耳には聞いていた。
根暗で無愛想でウザい
…全然そんな事ないじゃん。
「どこにでもいる、女の子じゃん」