第4章 友達
だけど俺は目を疑った。
いつものような学校で見せる無愛想な表情とは違い、
笑っていたから。
けどあれは本物の笑顔じゃない。だってあの笑顔は
俺のものとそっくりだから。
俺はしばらく目が離せなかった。遠いと思っていた橙乃が、一気に近くに感じた。
橙乃は俺に気付くことなく客を送ったあと店に戻った。
翌日。
朝練を終えて教室に入ると、いつもの無愛想な橙乃がいた。
今日もクラス中から悪口を言われている。先生も気付いていながら黙認しているからタチが悪い。まぁ俺もそうだからあまり言えないけど。
それに味方をするつもりもない。
ただ、教室では笑わない彼女が、クラスメイトどころか学校中の生徒が全く関係ないはずの外でもあの表情をしているのか知りたかった。
俺には今、部活がある。あの窮屈な表情でも、部活という羽を伸ばせる場所があるからこそやってける。
彼女にはその場所があるのか。