第2章 懐かしい香り
従者会議、とはその名の通りなんだけど、皇子達に仕える者達が定期的に行う会だ。会議というがその実質はただの雑談会。自分の仕える皇子のここがかっこよかった、ここが素敵、といった様な話からたまに最近の近況を話したりと、まぁ色々だ。
紅覇くんに断りを入れてその従者会議に向かう。確かいつも会議を行っていたのは...と中庭に行くと案の定見慣れた人達が集まって楽しそうに談笑していた。
「や」
「あら、また次の人が...ってちゃん!?」
「殿!」
「いつ帰ってきて...!?」
そこに居たのは純々、青舜、あとあまり関わらないけど確か、第六皇女の従者の子。
「いや~さっき帰ってきたんだよね~。ごめんね、いない間、仕事押し付けちゃったでしょ?」
「いやそんなことより、無事で良かったぁ!」
うおおおんと泣きながら純々は私に飛びついてきた。よしよしとあやす様に頭を撫でる。
「皆変わってなくて安心した。あ、そうだ、忘れてたけど、
ただいま。」
「!
おかえり!」
従者会議を開く様に私達従者は仲が良い。そんな皆に会えてやっと帰ってきたことが実感として湧いてきた。
~~~~~~
従者達で沢山お話をしたあと、一緒に昼餉も取った。そして今は部屋に帰るところだった。
「!」
部屋に帰る時に通ったのは紅炎様の私室。
「.........」
いらっしゃらないと分かっていても、怒られると分かっていても、見放されていると分かっていても、紅炎様とまたあの時みたいに笑い合いたいと思ってしまう。
そこにいらっしゃるのではないかと考えてしまう。
そうして私はほぼ無意識の内に、紅炎様の私室に入っていた。
「.....っ」
そこには懐かしい、ずっと焦がれた、紅炎様の匂い...。
思い出されるのは楽しかったあの頃。紅炎様の温情で楽しく過ごせたあの日々。もう戻れないのに、ついそれを欲してしまう。
鼻がツンとして涙が溢れそうになるがそれを必死に堪える。
辛い。ここにいると辛い。胸が苦しくなる。
それから逃げるように私はそっと部屋を出た。