第4章 月に乱れて
「お茶ばっか飲んでないで、こっちにおいで」
褥に横たわってる才蔵さんが、少し低い艶っぽい声で、わたしを呼んだ。
「あ、えっと、はい」
(なんか、今日の才蔵さん、色気あり過ぎて、めちゃくちゃ緊張するよ)
わたしは、才蔵さんの寝転がってる褥に行くと、そっと才蔵さんの前で正座した。
わたしを見た才蔵さんが、くすりと笑う。
「え?笑うところですか?」
「うん、笑うところ」
「どこがですか?」
「今のお前さんの全部」
「えっ」
「普通、正座しないでしょ?初めてでもない相手に」
(うう、そうなのかな?)
言葉に詰まっていると、才蔵さんが 妙に艶かしい目をして言った。
「俺達、今まで、何回したか、覚えてる?」
「えっと、10回くらいですか?」
「違う」
「12回くらい?」
「違う、14回。普通こういうの女の人の方が覚えてるでしょ?」
「そうですよね....すみません」
と言いながら、はたと 気付く。
普通 女の人の方が、覚えてるでしょ?って才蔵さん言ったよね?
つまり、才蔵さんは、過去に、女の人に、回数を言われた経験あるから、こんな事言うんだよね?
なんだか、心が凄く痛い。
「何考えてるのさ」
「えっと、」
凄く聞きたい。才蔵さんの過去の事。でも、切り出し方が分からず、悶々としてると才蔵さんが言った。
「言いたい事あるならいいなよ」
よし!この際だ、聞いてみよう...
「あのう、才蔵さん伊賀の里でも、こう言う事して、回数数えられたりして....恋仲っぽい人いたんですか?」
才蔵さんは、呆れた様に言った。
「俺が 任務至上主義の冷徹な忍って分かってるでしょ?お前さんも?」
「そんな相手居た訳ないじゃない?」
「あ、一人だけ居た。
桜の木の下で
俺にお団子くれた女の子」
!!
才蔵さんは、そう言うと、わたしを褥の上に組み敷き、わたしの口を塞ぐ。甘い長い口付けに、身体の力が抜けてゆく。
才蔵さんの舌が、わたしの唇をなぞる。
ほんの少しだけ お酒の匂いがする口付けに才能さんの色気を感じて眩暈がする。
「っ.......さ、才能さんが、好きです」
わたしの唇から零れた言葉を掬う様に才能さんが言った。
「俺もお前さんが、好き」
「こんな 気持ちに 俺をさせたのは、お前さんだけ。覚えて置いて
何回も言わないから」