第4章 月に乱れて
部屋に戻ったわたしは、乾いた喉を潤す為に、お茶を飲みながら、ふと思った。
「才蔵さんって、わたしで満足してるのかな.........?」
考え出すと、不思議な物で、次から次へと不安要因が出て来る。
自分が大した見た目だとは、全く思えない。
料理以外に取り柄なんて、あるだろうか?
お団子作り以外に才蔵さんを喜ばせる事してるかな?
才蔵さんって、当たり前だけど、きっと色んな人とわたしみたいな
秘事の経験たくさんしてるよね?
そうだよ、してるよね..........?
まあ、恋仲は、居なかったと思う。
いや、実際の所、本当にそうなのかな?
恋仲とまで、いかなくてたって、少しくらい良いなって思う人居たんじゃないかな?
そして、その人とも、わたしとみたいに、深い関係になった事もあったんじゃないかな?
才蔵さんって、京の夕霧(伊賀の忍達の情報収集の為に伊賀の忍び達で営んでいる小料理屋)に、わたしを連れて行ってくれた時の雰囲気で、分かったけども、女の忍の憧れの忍だったよね?
当たり前だよなぁ。
だって、才蔵さん、恋仲のわたしが見たって、見惚れる程の良い男だもん。
「はぁ......」
わたしは、思わず大きなため息をついてしまった。
色々考えると何だか、心がもやもやして来てしまう。
「だめだ!良くないよ!
せっかく信玄様に温泉に来るという有り難い、お計らい頂いてきてると言うのに、こんなんじゃ!
でも.....」
「はぁ......」
二度目のため息が出る。
「はぁ.......」
三度目のため息が出た時に、襖が開いて、才蔵さんが部屋に戻って来た。
「お疲れさん」
「あ!才蔵さん、お帰りなさい!!!」
不意に、戻って来た才蔵さんにはっとして、大きな声が出てしまった。
才蔵さんは、わたしをじっと見つめて言った。
「お前さん、何考えるのさ?」
「えっと、別に、温泉良かったなって考えてます!」
わたしは、思わず、大きな上擦った声で言った。
貼り付けた様な、笑顔をしていると才蔵さんが言った。
「まっ、今夜、いっぱい喜ばすから、期待してなよ」
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