第9章 きす。
「オハヨー、夏美!ナナ!」
「おはようございます」
「おはよ、光太郎、赤葦」
赤葦が一瞬、ムッと口を尖らせた。
ん?どうしたのかな?
「俺大盛りー!」
「あ、うん、分かった」
皆のご飯をよそい終え、自分のお盆を持って席を移動していると、ナナちゃん共々光太郎に呼ばれた。
「光太郎センパイいっぱい食べますね!」
「おう!」
ナナちゃんは光太郎の隣、私は赤葦を隣に座る。
食事中は光太郎がずっと話していた。
私達はそれに相槌を打つだけ。
「これ、夏美さんが作ったんですか?」
「お味噌汁だけ……だけど」
「美味しいです。
味噌汁が美味い人って料理上手って言いますよね」
「そんなことないよ、ありがとう」
赤葦に褒められるだけで、胸がポカポカする。
練習一発目は、烏野との試合。
「頑張ってね」
「はい」
隣に立った赤葦に小さく零す。
嬉しそうにニッと笑った顔が頭から離れない。
試合中、烏野にペースを乱されながらも自分達のプレーをしていた。
ボールを追う赤葦から目が離せなかった。
だから、飛んで来たボールへの反応が遅れたんだ。
「っ夏美さん!?」
遠くで、赤葦の声が聞こえる。
試合中だから、そんなことないのにね。