第1章 カワイイ彼女
好きな人はフリー。
……なんてことは夢の中の世界だけで、私の好きな人には彼女が居る。
それが事実であり現実。
「あかーし!もう1本だ!」
「はい」
「木兎、赤葦!
あと5分だからねー」
「おうっ」
「はい」
私は強豪、梟谷学園高校で男子バレー部のマネージャーをしている。
本当は家庭部に入るつもりだったんだけど隣の席だった木兎のゴリ押しに負けて入部したのが3年前。
「夏美ー!ドリンク!」
「はい、お疲れ様。
赤葦、今日も来てるよ」
「あ、はい。
行って来ます」
木兎と赤葦にドリンクを手渡し、体育館の入口を指す。
「お?今日も来てんのか?
赤葦のカノジョ」
「来てるよ」
朝練の終わり頃、体育館の入口から覗く女の子。
……赤葦の彼女。
小柄で髪がふわふわしていて、笑顔が可愛い。
いつも能面のような表情の赤葦も、そんな彼女の前では優しい顔をしている。
その顔を見ると胸がツキリと痛む。
「夏美?どした?ボーッとして」
「え?あ、ううん!なんでもない!
さ、教室戻ろ」
木兎は鈍いのに、変なところだけ鋭い。
「ねぇ、木兎……」
「ん?」
「……やっぱりなんでもない!
そういえば今週末のテスト大丈夫そ?」
「え、テストなんてあったっけ?」
「あるよ。
明日は数学の小テストもあるし、赤点取ると放課後に補習だから部活に出れなく……」
「やだ!
夏美!頼む!教えてくれ!」
パチンと顔の前で合わせられた手。
1年の時に成り行きで木兎に勉強を教えてから、テスト前に勉強を教えるのが定番になっている。
「言うと思った!
部活後で大丈夫?」
「問題ねぇ!ありがとう!」