第2章 青い色と白い色
ゆうげの後片付けも終わり、
庭で、紅く染まる夕焼けを背に朝顔をしゃがんで見つめていると
庭で鍛錬を終えた、幸村様と佐助くんがわたしを見つけて近寄って来た。
「朝顔か?」
佐助くんが、わたしの後ろから覗き込んで言った。
「朝顔とは、夏らしい物を、は買って来たのだな」
青い色と白い色の二つの朝顔を見つめながら、幸村様が言った。
「俺は、こっちの青い朝顔が好きだな。佐助お前は?」
「幸村様、俺も青い方が好きです」
佐助くんが嬉しそうに言うと、幸村様は、佐助くんの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「青い朝顔は、涼しげでとても良いですよね」
わたしが 相槌を打つと幸村様も佐助くんもうんうんと首を縦に振る。
そこへ、いつのまにか来た才蔵さんが、お団子を食べながら、わたし達の会話を聞いていた。
才蔵さんに気づいた幸村様が
「才蔵、お前は、どちらの朝顔が良いと思うか?」
「白い方」
それだけ言うと、才蔵さんはお団子を食べながら、何処かへ行ってしまった。
次の朝、わたしは、二つの朝顔に、水をやってると、信玄様がやって来た。
「は、朝顔が好きか?」
「はい、京の実家でも毎年夏になると朝顔を咲かせておりましたので」
信玄様は、優しく頷くと
「が、この朝顔を両方選んだのか?」
「いえ、わたしは青い方を選んだのですが、才蔵さんが白い方も買って下さいました」
「才蔵は、をとても愛しているな」
信玄様はわたしを見つめて、うんと頷き屋敷へ帰って行かれた。
わたしは信玄様の言葉の真意が分からず二つの色の朝顔を見つめていた。
次の朝早く、わたしが朝顔に水を与えていると
清広さんが立っていた。
「さん青い朝顔の花言葉は《短い愛》
白い朝顔の花言葉は《固い絆》です」
わたしは、はっとして部屋でまだ寝ているはずの才蔵さんの元へ走ったのだった。
それを、木の上から見ていた才蔵は 清広も相変わらず、お節介だねっと ふっと優しい声で呟いた。
「才蔵、お前また木の上か、が探していたぞ。行ってやれ。」
才蔵は、幸村を見ると はいはいとだけ言って
自分を探している愛しい女の元へ ゆっくりと歩いて行ったのだった