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第4章 1.03 異能力
時は戻り、要塞内。
「外交行くんはええけど、こっちはなんの情報も無い上に切り札も無いんやで?そんな状況でなんや?不可侵でも結んでこいとか言うんちゃうやろな?」
オスマンは呆れたようにグルッペンに尋ねた。
「む?オスマンならできるだろう?」
もっきゅもっきゅとおやつのケーキを食べながら、グルッペンは何の疑いも無く発する。
それを聞いてオスマンは更にウンザリした顔をしながら、グルッペンへ淹れたての紅茶を渡す。
「俺だってなんでも出来るわけじゃないめう〜。…取り敢えず、今ロボロと大先生はネットから、シッマとショッピ君、シャオちゃんとエーミールがそれぞれ街に情報収集に行っとるから、せめてそれは待ってからやで。」
そう云うとグルッペンは不服そうに“ぐっ…”っと言い紅茶を飲んだ。
ーーーすると、突然侵入者を告げるアラームが城内に響く。
《グルちゃん!城壁に侵入者や!》
大先生の声と共にゾムがダクトに飛び込み、城壁に向かう。
「…人数は?」
落ち着いた声でグルッペンは情報を求める。
《カメラで見えるのは犬1匹と…女の子が1人?若しかすると、例の異能力者かもしれへん。》
その言葉と同時にモニターに城壁が映し出される。
そこには真っ白な犬に跨る白いフード付きのポンチョを身につけた少女がいた。
《こちらゾムーク。城壁に着いたで。奇襲、かけてええ?》
ゾムが息を殺してインカムを繋げる。
その様子をモニターで見ているグルッペンは、それは嬉しそうにゾムに一言。
「ふむ。ゾム、彼女を中へ。」
それを聞いていた城内の面々は本日何度目かの溜息を同時に吐いた。
「オスマン、紅茶と茶菓子の用意を。あぁ、後あの犬っころ用に水と…。ーーートントン、悪いが彼女を迎えに行ってやってくれ。」
淡々と指示を出し、グルッペンは新しい玩具を見つけた子どものように目を輝かせた。