第6章 俺様暴君にご用心!?
「ぁ……」
瞬間。
あたしの胸へと、彼は欲望を吐き出したのだ。
「……斗真」
「勝手なことしてんじゃねぇ」
「……っ」
はじめて聞くような、低い声。
に。
体がビクン、と、強張った。
「お前は俺のゲームのコマだ、コマが勝手に動くんじゃねぇよ」
「……ごめんなさ……っ」
「次はねぇからな」
低く、睨むようにあたしを見ながら言う斗真。
一瞬怒ってるのかと思った。
だけど。
言葉は怖いけど。
なんだろう。
すごく、優しい目。
「あーくそ、ヤりそこねた」
「?」
「冷たいけどそれ、羽織っとけお前」
「斗真?」
びしょ濡れになったスーツの、水を吸って重たくなった上着をあたしへとかけながら。
機嫌の悪そうな斗真の声。
ポカン、と、斗真を見上げれば。
「透」
「?」
「そろそろ、来る頃だから」
「ぇ」
「あいつのことだから、わざと少し時間立ってから探しに来たフリするに決まってる」
「?なんで?」
「俺ならそーする」
「は?」
「ふたりで遭難なんてこんな美味しいシチュエーション、滅多にねーし」
「?意味わかるように解説お願いします」
「ヤってんの見越して、終わった頃迎えに来るっつってんの」
「は?」
はぁぁぁ!?
「怪我してんじゃん」
「これは予想外」
「めっちゃ体冷えてんですけど」
「怪我してっし。病院行けば止血できんだろ」
「はぁ?」
「うるせーよお前」
「だって」
「言ったろ?俺が白だっつったらコウモリだって白くなんだよ。」
「意味わかんない」
「世の中手の内だってこと」
「………」
ますます意味わかんない。
この俺様至上主義、頭でも打ったかな。
この暴君独裁者の予言どーり。
透が救助用の船であたしたちを迎えに来たのは。
それから数分後のことだった。