第4章 ほんとうの、理由
「來」
「なんでもないっ、違うっ違うっ。わぁっ、だめ、こっち来ないでっ!!」
「何勘違いしてんだよ、ばーか」
「ぇ」
「薬、飲んでないでしょ?」
「薬……?」
「ん」
いつものように、薬が口の中へと押し込まれると。
口うつしで冷たい水が流れ込んできた。
強い口渇を感じていた喉には、心地よく、浸透していく。
「あれね、この薬のせいだから、気にしなくていいよ?」
「………っぅえ?」
喉元を通りすぎる前に耳に届いた言葉に。
思わず飲み込んだ、大量の空気たち。
そのまま当然ながら、むせこんだ。
「どーゆーことっ?」
『あれ』、は。
もちろん昨日のあたしの、あれだ。
体が熱くて。
苦しくて。
…………触れて欲しいと、自ら願った。
「そのまんまだよ」
「それじゃわかんない」
「この避妊薬、女性ホルモンと反応して、いわゆる発情期、ヒート、って、言うんだけどね?それを、引き出すんだよ。ホルモンの量が多くなる排卵前後48時間、ヒートに入るんだ」
「…………は、え?」
発情期?
ヒート?
言ってる意味が、わかんない。
「副作用、だ」
「え?」
「この薬作ったの、俺たちなの、実は」
っ、え?
薬?
作った?
「えぇっ?」
嘘。
作れるの?
薬?
「いわゆるレイプドラッグ、って、あるでしょ?あれね、副作用強くて酷い頭痛がするんだよね。だけどこれなら、副作用もないし安心して女の子も気持ちよくなれるんだよ。避妊薬だから、安心だし。」
「………どーゆーこと?」
「副作用は、効き目が強すぎることだな。昨日のお前みたいに」
「…………っ」
かぁぁぁっ、て。
一気に顔が赤くなる。
待って。
てことは、だよ?
あたしの、あれ、は。
全部これの、せい?
「これ飲んでるとね、いい匂いするみたい。ライちゃんからずっと甘い匂いしてたよ?ヒート中はさらに甘くなるみたいだね」