第19章 番外編 映画鑑賞はお静かに
何が地雷を踏むのか、スイッチを押すのか。
人は誰しも気付かずに生活してるって、思う。
もちろんそれはあたしにとっても例外なんかじゃなくて。
最悪な1日は。
最高な言葉とともに、幕を明けたのだ。
「映画?」
「うん、好きだったろ?お前この俳優」
「うん!好き!めっちゃ好き、ほんと大好きっ」
「目がハートになってるよ、ライちゃん」
だってずっとずっと好きだったもん。
ちょい役で連ドラ出た数年前から気になってて。
いつの間にかどこのテレビでも主役張れちゃうくらい有名になってて。
映画にも出るって、話題になってた。
すごくすごく、大好き。
「………これ、映画のチケット?」
「何に見えんのお前」
「普通に見るやつ?」
「普通じゃないってどんなの、ライちゃん」
「………」
だって。
いきなり映画とか。
めちゃ怪しいんですけど。
だって前映画見た時はいきなり貸し切りとか、しちゃったし。
この前なんか実家のシアタールームで最新の映画が上映されてた。
これ。
このチケットがあるってことは、映画館に行くことは間違いなさげだけど。
「なんもないよ、普通の前売りだってば」
絶対、あやしい。
「見たくないなら別にいいよ」
「わ!!待って、見たい!!見たいです斗真さまっ」
手の中からチケットが消えて。
あわてて斗真の腕にしがみつく。
「見んの?」
「みんの!!」
「……ったく、始めっから言えよめんどくせぇ」
「……ぅぅ」
だって絶対、裏あると思ったんだもん。
いや、良く考えれば裏がないわけがないんだけど。
良く考えられる優秀な頭があればたぶんあたし、ふたりに掴まってないわけで。
ペットになることもたぶん、なかったわけで。
「決まりな」
大好きな『朝比奈 煌』の映画を見ることで頭も胸もいっぱいで。
ふたりの意味深な笑みになんてもちろん、気付くはずもなかったんだ。