第18章 番外編 『仲良し』(後編)
「…………」
肩で、といわず全身でなんとか呼吸しながら。
体はソファーからずっと動けない。
目を開ける気力すら、ない。
「………さすがにやりすぎた、か?」
膝を枕に寝転ぶあたしの頭を撫でながら。
珍しく声色が困惑してる。
けど。
もう突っ込む元気さえない。
「ベッド連れてく」
「……ああ、だな」
くたりと動かないあたしをそっと横に抱きながら。
たぶん抱き上げてくれたのは透なんだろうけど、わざわざ確かめる余力は残ってない。
「ライちゃん、起きてる?」
目を開ける気力すらないから、小さくコクンてだけ、頷く。
「水飲める?」
ベッドに寝かせられるとすぐに上半身だけ起こされて。
だるい瞳を少しだけ開ければ。
斗真がペットボトルを手に部屋に入ってきた。
「お前脱水起こしてんだよ、水飲めるか?」
「水、飲ませるね」
柔らかい唇が触れて、冷たい水が口の中を満たす。
喉も舌もずっと声出しすぎてカラカラだったから、冷たい水がすごく心地いい。
「大丈夫?」
「悪かった、ほんとごめん」
「もう少し飲める?」
「………飲ませて」
まだまだ体は怠いけど。
水は飲みたい。
飲ませて貰えば好都合だ。
「………はいはい、お姫さま」
一瞬面食らったように驚いて、すぐに破顔する透。
だって珍しくふたりがしおらしくて。
ぐったりしたままなのは癪だったんだもん。
「俺やっぱお前好きだわ、來」
ベッドに腰掛けて。
頭を撫でてくれるおっきな掌は、あたしも大好き。
「トびまくってるライちゃん、中毒になりそうだよ俺」
「それな!!」
「な!」
「………」
じと、と和気あいあい仲良ししちゃってるふたりをひと睨み。
「冗談だよ」、なんて小さな声が聞こえたけど。
やばい。
本気で眠くなってきたかも。
うとうとと目を瞑れば。
「おやすみ」
そう、囁くふたりの優しい声が聞こえた。
番外編『仲良し』 ━完━