第15章 ゲームオーバー
「………って」
ここ、病院だけど?
「ねぇ……っ」
前を歩く斗真の背中を掴むけど、一向に足を止める気配なんてなくて。
「………」
仕方なく、黙ってついてきた先は。
あたしの良く知ってる景色、色、病室の、番号で。
「………お母さん?」
そう。
お母さんの、病室だ。
「なんで?」
相変わらず真っ青な顔して、生命維持装置に繋がれたままの姿。
ピ、ピ、ピ。
規則的な機械音と、呼吸。
お母さんだけど、お母さんじゃない。
もう『生きて』んのかさえ、わかんない。
『生かされて』る、の方がたぶん正しいんだ。
入った途端に歪む表情に、斗真の掌が頭に触れた。
「ごめん、來」
「ぇ」
「お前の母親から、俺命貰ったわ」
「…………?」
「昔から、斗真肝臓に病気、持っててね」
「ぇ」
「移植、しかなくて」
「…………っ、ぃ?、しょく」
あ、れ。
ぇ。
ちょっと待って。
「ごめん、ここ、ウチの系列病院なの。バカ親だけど、最後くらい息子のためにいいことでもしようとしたのかな。それともたまたま、かな。ライちゃんの、お母さんを見つけた」
「お、母さん?」
「そう。だから來に近付いた」
え。
「來と、結婚、するために。どっちかの子供、孕んでもらうために」
「…………っ」
「移植ってね、誰からも貰えるわけじゃないんだよ。親族だけなんだ。」
ドクン ドクン ドクン
嫌な音が頭に木霊する。
やけにうるさく心臓の音が聞こえるのは、なんでだろう。
「だけどもう、移植終わったし」
「お前用済み」
ドクン。
ああ、やばい。
心臓止まりそう。
「………バイバイ」
「ライちゃん」
「…………っ」
『バイバイ』
ギュ、て。
俯いたままに唇を噛んだ。
泣いちゃ、だめ。
泣かない。
「……親族だけなら、なんでお母さんから移植できたの?」