第14章 責任は、誰がとる?
「これ」
「ん?」
「『これ』、なんで?」
口の中に入れた、オレンジ味の冷たいそれを口から取り出して。
「ああ、さぁ?なんとなく?」
「なんで、今?」
「なんとなく?」
「透」
横になったままの斗真に毛布を掛けてあげながら、誤魔化す透の背中を睨み付けた。
「女の子はそんな怖い顔、しちゃだめだよ」
「ぇ」
なんで、見えてないのに。
「だから、なんとなくだってば」
「…………」
なんだろう。
『なんと、なく』。
あたしにもわかる。
「………なんか怒ってる?」
「は?」
あ。
崩れた。
いつでもむかつくくらいに張り付いたポーカーフェイス。
見えた。
透の感情。
「斗真のこと?」
「別に怒ってないけど」
「なんで?透いつもそうやってなんでも隠すの、なんで?この前だって突き放す『フリ』までして…」
「うぬぼれすぎ。フリじゃないよ。キミに飽きた、そう言ったでしょ?」
「…………っ」
怯むな。
透の視線なんかもう、怖くない。
感情を圧し殺した冷たい瞳なんてもう、怖くない。
これは透の表情(かお)なんかじゃないもん。
怖くない。
「嘘だ。」
「すごい自信ついたみたいだけど、俺と斗真は違う。キミになんかはじめから興味なかった」
「嘘」
「嘘つくメリットもなしにつかないでしょ。だから子供なんだよライちゃん。短絡的」
「なら、ちゃんとこっち見てよ」
睨んでも冷たい視線でも、背中向けられるよりずっといい。
こっち見てよ。
「………透」
「ライちゃん」
一歩、近づこうとするあたしを透の声が邪魔した。
「残念。逃げるチャンスあげたのに。無駄にしたのはキミだよ?」