第12章 『すき』『きらい』
わかってる。
そんなの、あたしのわがままで。
それはとおらないってことも。
あたしは彼らの玩具で。
愛玩動物で。
飽きたら、あたしはいらない。
あたしには、その決定権すらないってこと。
「……どーする、透」
「!!」
うつむいたままに、呼ばれた名前に目を見開いて。
弾かれたように顔を上げれば。
開きっぱなしのドアに凭れて、無表情で前を見据える透の、姿。
「なん、で」
「ここ俺ん家。いちゃ悪い?」
震える声で投げかけ、それに応えるように透はゆっくりと視線を落とし、あたしを見据えた。
表情はまだ、何の色も宿さずに。
「ま、でも。いれば?いたいなら」
「ぇ」
「俺も賛成」
「とー、る、とー、ま……っ」
「それにしてもさ、せっかくチャンスあげたのにね」
「るせ」
「?」
凭れていたドアから離れ、ゆっくりとこちらに近付いてくる透はいつもの笑顔で。
あたしの前で止まると、透はゆっくりとあたしの顔を両手で持ち上げた。
「ライちゃん」
「とー、る?」
見下ろす透の瞳を交互に見つめ返せば。
嬉しそうにその瞳は細められ、次の瞬間透の腕の中。
肩に埋められた顔からかかる吐息に体がゾクリと粟立った。
「ちっさいな。強く抱きしめたら潰しちゃいそう」
「ぇ、え、え?」
あ、あれ?
なんか、状況がよく、飲み込めないみたい?
「潰すなよ。お前ほんとやりそう」
「まさか。潰さないよ」
「どーだか」
「潰す前に止めるでしょ、斗真」
「そりゃな」
頭上でなされるじゃれあいに、目をパチクリと見上げれば。
視線に同時に気付いたふたりが、同時に左右の頬っぺたへとキスを落とした。
「!???」
ますます意味がわかんなくて。
さらに驚きに目を見開く。
さっさまでたしか、すごく空気が重かったはず。