第12章 『すき』『きらい』
一緒、に。
まっすぐに見据えて、返事を待つ斗真からいたたまれなくて視線を外せば。
それでも斗真は、優しくあたしを誘導する。
「なぁ來、こんな時間に雨の中、傘もささずに何してた?」
「ぇ」
「病院からほど遠くない交差点で、雨の中何してたのお前」
「それ、は」
「車にでもはねられるの待ってるみたいだった、そう言ってたみたいだせ、ぶっ倒れたお前を通報してくれた人」
「………っ」
「怪我でもすれば、ここに運ばれる?俺に連絡がいく?お前さ、そんなまわりくどいことまでして俺に心配かけたかったわけ?」
「…………」
違う。
否定できないのに。
言葉なんて出るわけない。
「俺が心配するか、ためしかった?」
「ぇ」
「俺が、どう行動するか、知りたかった?」
「………」
怖かった。
斗真にまで、『いらない』って言われるの。
怖かったんだ、あたし。
「………っ、たし、ごめん……っ」
「ほんと、聞いた時はまじで心臓とりあえず5秒止まったわ」
「なにそれ、生きてないじゃん」
「顔見るまで生きた心地しなかったんだよ」
むにー、って。
両方のポッペタつねられて。
両手トントン叩きながらギブアップの意思表示すれば。
「これで最後だ、來」
手を離したと同時に。
斗真の真剣な眼差しと、視線が絡んだ。
「俺と透、どっち選ぶ」
「…………っ」
どっち。
どっち?
選ぶ、って、何。
何を基準に選ぶの?
何を根底に、ふたりのウチどちらかを選ばなきゃいけないの?
「………ふたりでひとつ、なんでしょ」
「?」
「もともと同じ個体だったふたりのウチどちらかを選んで、何か意味あるの?」
『それ』は、答えなきゃいけないの?