第11章 番外編『仲良し』
ある日の放課後。
「…………」
真っ黒な高級車に背中を凭れさせ、道行く人々の注目を一身に浴びてる男たちが、ふたり。
楽しそうにふたりでじゃれあいながら、ひとりがライターでタバコに火を付ければ、もうひとりは片割れのタバコから火をもらう。
「はぁ?使えよライター」
「手寒いもん、いーじゃん、斗真の火付いてんだし」
「つけたんだよ、俺だってさっみーつーの」
「斗真からもらった方が、旨いしさー」
「………」
そこは、赤くなって言葉詰まらせる場面では決してないと思うんです、斗真さん。
「ライちゃん、遅いね」
「いつまで待たせんだよあのバカ」
いるけどね、ここに。
だいたい寒いなら外いないで車で待てば良くない?
こんなとこで悪目立ちしなくて良くない?
「だってさ、來、ほら」
トン、て。
背中を押されれば、人だかりの中体はその一歩前へと進み出た。
「まきちゃんっ」
後ろを振り向きながらまきちゃんを睨み飛ばすけど。
その前に彼の視線はあたしを通り越している。
「來」
「あ」
まきちゃんの視線を追うように顔ごと前を向けば。
斗真の怒った顔。
「おっまえおせーんだよ。だいたいまだあの男といんの?懲りねーな」
「痛い痛いっ、斗真それほんと痛いっ」
グーにした両手をこめかみに当てて、グリグリと捻られれば、冗談抜きで脳が悲鳴を上げてる。
「そりゃ良かった、痛くしてんだよ」
「とーるっ、笑ってないで助けてよー」
「えー?お兄様にはさからえなーい」
こんな時ばっかりずるい。
いつも好き勝手してるくせにーっ。
「それよりさー」
不意に後ろから伸びて来た掌が、縛っていた髪の毛をほどく。
途端に現れたのは、まっすぐに伸びた長いストレート。
「お前、何してんの透」
斗真の制止も聞かず、ついでに斗真にもらった眼鏡ごと外されれば。
途端に上がるのは、小さな悲鳴。