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愛玩彼女

第10章 すれ違い


病院の、地下駐車場。


そのまま運転席に乗り込もうとした透を、後部座席へと引き込んだのだ。









「何を話したのかだいたい想像出来るけどね。今のキミを見たら」


さっきまでの優しく柔らかな眼差しの代わりに、向けられたのは鋭く激しい視線。
口調は穏やかなのに、視線はすごく、冷たい。


「全部ほんとだよ」
「ぇ」
「全部ほんと。真実。……そう、思ったからキミもこんなことしたんでしょ?」
「……とーる」


「俺さ、別にライちゃん、好きじゃないし」







「____ぇ」





『好きじゃない』。

愛されてると思ってたわけじゃないけど。
勘違い、してるつもりもなかった、けど。


自然と溢れ落ちた言葉に、驚愕の意味で両目が見開かれた。
そんなあたしの反応に、蔑むように瞳を細めて、透はさらに言葉を続ける。


「墜ちたら、おしまい。ゲームオーバー」




可笑しそうに笑う、目の前のこの人、誰だっけ。
あたしこんな表情、向けられたことたぶん、ない。



「な、に言ってんのかわかんない」



駄目だ。
声が震える。



「だからね?今のライちゃんには、興味がわかない」
「ぇ」
「打算や計算で動くコ、好きじゃない」



「………っ」






ぎし、って。
座席を軋ませて、運転席へと移動する透を、視線で追いかけた。


「帰ろっか」


振り向き際にそう、笑う透はいつもの天使みたいな笑顔で。
それが余計に。
怖かった。
透の優しさは、時に残酷で、冷酷。
いらないものはいらない。
自分の望んだものしか、そばに置かないしそばにいない。






あたしはもう、いらないんだ____。




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