第7章 崩れた関係性
「………ぇ」
耳へと響いた声に、振り返る。
「なん、で」
「辛いんデショ?手伝ってあげるよ」
「……まき、ちゃん」
だってさっき、ドアの音、したのに。
出てったんじゃないの?
「ねぇ來、そのパトロンのじぃさんに何されてんの?」
「ぇ」
「だってこれ」
「!!」
「普通の反応じゃないよね?」
「ひっ!!……ッぁあん」
体育座りの足の間、丸見えの下着へと手を伸ばすと。
まきちゃん……『彼』、は。
人差し指でそこを上下へと擦りあわせたんだ。
「……っ、予想以上、なんだけど」
「ゃめ…っ、まきちゃ……っ、やだぁっっ!!」
下着の上からでもすでに厭らしく音を奏でるそこは、まきちゃんが擦る度に、さらに潤いを増していく。
慌てて足を閉じて、彼の右手を押し退けようとしても、力が入らない体ではただもう、しがみついているようにしか見えない。
「來、それ全然説得力ない」
「ふっ、………っんんぅ」
屈んだまま、唇が重なれば。
いつもと違う味。
タバコの、味。
「……っや、…んん」
顔を背けて逃れても、またすぐに捕まる。
違う違う違う。
味も。
キスの、仕方も。
気持ち良さ、も。
全然、違う。
「や、だぁ」
違う。
いつもの、背筋を駆け巡る心地よい快感なんかじゃない。
ゾワゾワと、刺されたような寒さに背筋が凍る。
気持ち悪い。
全身の、毛穴が開く。
「……や、だめっ」
やっと解放された唇を、手の甲で拭えば。
肩がトン、と押されて背中が床へとくっついた。
と、同時に。
両足を持たれて、間にまきちゃん、が、体を寄せる。
「こんな溢れさせて、説得力ないってば」
「…っ!!ふ、ぁあっっ」
いきなり襲い来た、下腹部への衝撃に、頭を鈍器で殴られたかと、思った。