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【イケメン戦国】夢心地の宵

第1章 天下人の女 【織田信長】 《R18》




別に責めてる訳じゃ…と言いかけた家康さんを窘め、こちらへやって来た秀吉さんは。
傍らに座り、柔らかな表情を浮かべた。


「ごめんな茅乃。こいつ根は良い奴なんだが言葉選びが上手くないんだ」

「い、いえ…そもそも私が悪いので」


最初は私に対してかなり警戒していた秀吉さんだけれど、今じゃとても優しく接してくれる。
三成さん然り、比較的話しやすい相手だ。


「いきなり環境が変わって戸惑ってるんだろう?お前が悪い訳じゃないさ。
しかしだなぁ……部屋に籠もってばかりいては体に良くないぞ」

「……」

「今日は軍議の後、皆で夕餉を摂る予定だ。広間に顔を出してほしい」

「でも、……」

「ひとり寂しく食うよりも誰かと食う方が、飯は美味い。
だから来いよ。な?」


断ろうと思った。
でも、
こうしてたびたび気に掛けてくれるのに、これ以上拒絶するのは心苦しくて……
僅かな沈黙を経て、小さく頷いた。


家康さんと秀吉さんが立ち去ってから、刻一刻と過ぎていく時間ーーー
日が傾くのはあっという間で。
頃合いを見計らった侍女は、私の身なりを整えようと鏡台へと連れていく。


「あの…待ってください。
私はこのままでいいです。食事するだけなので」

「まぁっ、いけませんわ。御館様の前に出るんですから。
それに、化粧と整髪は姫の嗜みですよ。お着替えもしないと……」

「いいんです。
……私はこれで、いいんです」


困惑する彼女に深々と頭を下げた私は無造作に梳いた髪を翻し、普段の格好のまま部屋を出た。
 
ーーーだって。
化粧も、きらびやかな着物も、
私には似合わないもの。

ひたすら地味におとなしく、目立たずに。

それで充分なの。



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