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【イケメン戦国】夢心地の宵

第1章 天下人の女 【織田信長】 《R18》




願いも虚しく、乱世の朝は毎日やってくる。

もちろん、時代が違えば文化も違う訳でーーー
申し訳ないくらいの丁重な扱いを受けるばかりか、用を足すにも入浴するにも必ず侍女が付き添ってくるもんだからその都度困惑してしまう。
慣れない着物や姫という立場に気疲れを感じていて、なるべく一人きりになりたくて。
できる限り他人との接触を避ける為、食事は部屋へ運んでもらい、必要以外の行動をせず部屋に閉じこもる生活を送っていた。

そうして、更に数日が過ぎた頃ーーー


「今日は頭が痛いんだって?」

「……はい。目眩もあって」

「そう。じゃあ効きそうな薬を調合しておくけど」

「いえ…薬を飲むほど辛くはないので、少し横になっていれば良くなるかと。
ですからどうかお気になさらず……」

「ふぅん」


今朝の朝餉時も広間に姿を現さなかった私を気に掛けてくれているのか、様子を見に家康さんが部屋へ訪ねてきて。
大袈裟にならないよう、相変わらずの“ちょっと体調が悪いだけ”な芝居をしていたのだけれど……


「あんた、それ仮病でしょ」

「……っ」

「医者に診せても異常は無いし、顔色も良いし食欲だってある。どういう理由か知らないけど騙そうとしても無駄だからね」


ぎくり、と心臓が跳ねる。
聞けば、家康さんは普段から医学に関する書物を熟読していて、そちら方面の知識が豊富なようだ。
これ以上の言い訳は通用しないだろう。
ああ、ついにバレてしまった。


「だ、騙そうとしてた訳じゃないんです」

「なら何でそんな下手くそな芝居するのさ。もう十日目だよ、いい加減にして」

「それは……っ」


まずい、怒らせちゃった……どうしよう。
甘い顔立ちとは裏腹な刺々しい物言いに狼狽え、言葉を詰まらせていると。


「こーら、家康。そうやってあんまり責め立てるんじゃない」


いつの間にやらそこに居たのは。
開かれた襖の際にもたれ掛かり、腕組みしながらこちらを見下ろす男の人ーーー
秀吉さんだ。



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