第1章 天下人の女 【織田信長】 《R18》
それは、あまりにも突然でーーー
息をするのも忘れてしまった。
柔らかな感触、
微かな吐息の流れ……
程なくしてそっと唇が離れてからも、余韻は残ったまま。
私、たった今、信長様と…
……
「あ……」
どうしよう、どんな顔をすればいいんだろう。
ぎこちなく視線が彷徨ってしまう。
「っ…そうだ、贈り物のお礼言ってませんでしたよね。
ーーー素敵な櫛、ありがとうございます。なんだか使うの勿体無いなぁ………わっ!」
言い終わる前にふわりと浮き上がった身体。
私を横抱きにした信長様は、ずんずんと奥の間へ歩いていき……
捲った蚊帳の中に待ち構えていたのは、一組の褥。
敷布に下ろされたと同時に、やんわりと組み敷かれる。
「礼など要らぬ。その代わり、貴様の身も心も全て…俺に寄越すがいい」
仄かな灯りに照らされて、こちらを見下ろす表情はとても艶やかだ。
「ーーー」
どくっ、と大きく飛び跳ねる心臓。
“まだ心の準備が……”
なんて、以前までの私なら煮えきらない態度をとっていただろう。
でも、不思議と、自然に、素直に。
本心を曝け出すように、その広い背中へ腕を回したーーー。