第1章 天下人の女 【織田信長】 《R18》
「嫉、妬……」
「どうだ、図星だろう」
あの時、心の底から湧き上がったもの。
それは弄ばれたと思い込んだショックよりも、プライドを折られた悲しみよりももっと強い感情。
まさに指摘された通りでーーー
顔面がかあっと熱くなる。
「そ、それはまぁ…否めないというか…
けどまさか信長様が喜んでたなんて、そんな素振りなかったじゃないですか。
背中向けて行っちゃったし、てっきり呆れてるのかと……」
「あの自虐めいた発言は頂けなかったからな。
だが…俺が口を挟む隙も無いほど文句を吐き散らかし嫉妬をぶつけ、怒りに燃え滾る貴様の姿は見ていて爽快だった。冥利に尽きる」
「〜〜〜…っ、
信長様のツボは謎すぎますっ」
恥ずかしさが込み上げてきてますます顔が熱い。
でも愉しそうに笑う信長様を眺めているうちに、つられてこちらも頬が緩んできて。
穏やかな雰囲気のなか手当も終わり一段落ついたところで、
はた、と大事なことを思い出した私は。
胸元に仕舞いっぱなしだった木箱を取り出して見せた。
「これ、部屋の前に置いてありました。
蓋に刻まれたこの家紋…贈り主は信長様ですよね?」
「ああ」
「あの…また私の勘違いかもしれないんですけど…
女性に櫛を贈るというのは、もしかして…」
「勿論、そのままの意味だが?」
「…!」
「以前貴様に提案された“お友達から始めましょう”とやらはどうも性に合わん。
欲しいと思ったらすぐにでも手に入れたい、だから却下だ。
ーーー俺の奥になれ、茅乃」