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【イケメン戦国】夢心地の宵

第1章 天下人の女 【織田信長】 《R18》




“縁談を頂けるなんて夢のようで…”

“ご存知ありませんでした?”


呪いをかけられたかのように、彼女の台詞が頭の中を駆け巡る。

性格は顔に出るってよく言うけれど……

見下していても、
皮肉に満ちた勝ち誇った表情をしていても、
それでも彼女は綺麗だった。

私なんか足元にも及ばないほどに。

私なんかーーー 
信長様、あなたは非難するけれどそれは事実でしょう?
 
そんな私だから、
好きになった人から好きになってもらえるなんて、生まれて初めてで。

ずっとコンプレックスだった見劣りしている外見も、心の弱さも……
 
自分の全てを認めてくれたようで、
嬉しくて、舞い上がって。


「馬鹿みたい……」


料理に、化粧に。
馬鹿みたいにはしゃいだ挙げ句、この有り様。

嫌い。大嫌い。
見下されるほど冴えない自分も……
信長様に選ばれない自分も……

でも、なによりも。
こんな卑屈な自分が嫌いなの。


「…うっ、うう…」


手の甲に落ちる生温かい雫。
部屋に独りきり、膝を抱えて突っ伏したまま……
どのくらいそうしていたのか定かではないが、ある時ふと私の名を呼ぶ声がして。
襖の方へ視線をやると、そこには家康さんがいた。


「居るんだったら返事してよね。辛気臭い」

「…すみません、ひとりになりたいんです」

「へぇ。ひとりですすり泣いてれば問題が解決するとでも思ってるんだ」

「え……」

「さっき偶然この近くを通りかかった時…見たんだ。信長様とあんたのやり取りを」

「そう…ですか。じゃあ事情は察してますよね。お願いですから今はひとりにしてくださ…」


すると家康さんは私の訴えを無視せんとばかりにピシャリと後ろ手で戸を閉めて、こちらへと歩み寄ってきた。



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