第1章 天下人の女 【織田信長】 《R18》
……“いまり”……
信長様の知り合いだろうか。
「……あら?」
ぼおっと立ち竦んでいる私の存在に気が付き、こちらを向いた彼女は。
ぱっちりとした大きな瞳、
潤った唇、
整った輪郭、
色白な肌ーーー
声だけじゃなく、容姿までも
ハッとするくらい綺麗だった。
「信長様、こちらはどなた?」
「茅乃といって、織田家と所縁のある姫君だ。ここで共に暮らしている」
「まぁ…」
きょとんとした表情の彼女は少し間を置くと、私の方へ一歩踏み出してきた。そして……
「お初にお目にかかります、茅乃さん。わたくしは伊万里と申します」
「あ…
は、初めまして…」
「ご挨拶が遅れてしまって申し訳なかったわ。わたくしったら全然気が回らなくって。
てっきり女中だと……」
まるで品定めするように私の頭から足の先まで視線を上下させ……
くすっと微かな笑みをこぼす。
それは愛想笑いとは明らかに違っていて、
なんだか、こう……
「ーーー……」
見下されている、とーーー
直感的にそう思った。
「説明してやろう、茅乃。この者は我が軍の傘下である大名の娘でーーー」
黙ったままの私の元へ歩み寄った信長様が、そう話し始めると……
すかさず伊万里さんが横から入ってきて。
「そうなんです、当家にとって信長様は誇りですわ。
そのような殿方から縁談を頂けるなんて、夢のようで…
早くお会いしたく、こうして飛んで参りました」
………
……え?
「縁談…?」
「ええ。ご存知ありませんでした?」