第1章 天下人の女 【織田信長】 《R18》
それは、出逢った時の事。
私達が居たのは、火の粉が舞う灼熱の本能寺。
信長様は寝込んでしまっていてーーー
『大丈夫ですか!?しっかりしてください!』
『……っ、
……?貴様…何者だ』
『早くここから逃げましょう!』
『何者だと聞いている。何故来た』
『それは後で説明します!とにかくここから離れないと!』
『まずは質問に答えろ』
『そんな猶予はありません!早くっ!』
『無礼者め。貴様、俺を誰だと…』
『いい加減にしなさいよっ!あなたが誰だろうが関係ない!死にたくないんだったら私の言うこと聞いて!!分かった!?』
確かそう怒鳴りつけて彼を連れ出し、外に向かって懸命に走ったっけ。
怒鳴りつけて……
……
信長様にそんな口を利くなんて、冷静になった今思い返すと恐ろしい。みるみるうちに血の気が引いた。
「衝撃的だったな、あれは」
「すみません、あの時はっ…
早く助けなきゃって必死で…」
「感心したのだ。燃え盛る炎の中、俺を叱咤する貴様の姿に。
弱い人間のする事ではあるまい。己の強さに気付いてないだけだ」
「強い?私が…?」
「ああ。貴様は強い女だ。
…感心すると同時に、惹かれた。
そして…欲しくなった」
引いたはずの血の巡りが一気に活性化して、顔だけじゃなく全身までもが熱くなる。
惹かれた、って……
欲しくなった、って……
それは、えっと、その……
「改めて問う。
天下人の女になる気はないか?」
目が合えば最後。
引き摺り込まれ、
紅蓮の炎に焼き尽くされて。
二度と還ってこれなくなるーーー
初めて出逢った時にそんな予感がしたんだ。
私も惹かれていたから。
紅く、射抜くようなこの瞳に。