第1章 天下人の女 【織田信長】 《R18》
日々なにかと忙しい信長様だが、今日は午後から暇を取れるらしい。
貴重な時間を割いてまで私を外出に誘ってくれたのは光栄だけれど……
「眉毛の手入れサボったら駄目だよ、余計な部分は抜いちゃうからね。……えいっ」
「いっ!…たぁぁ〜…!」
「はい我慢我慢、可愛くなる為なんだから。
あ〜あ、髪もこんなにパサついちゃって」
「私の土台じゃ可愛くなんかなりませんよっ…だからもうここまでで…」
「大丈夫、俺に任せて」
女の私よりもよっぽど可愛らしい容姿の蘭丸さんはそう自信満々に言い切って、解放してくれそうにない。
美容に心得があるのか、彼の巧みな手捌きによって放ったらかしていた眉毛の処理やヘアケア、化粧を施されていき……
選んでもらった着物に身を包み装飾品をつけ、全ての支度が整った。
かれこれ半刻はとうに過ぎている。
はたして今どういう状態になっているのだろうと、鏡台の前に立つーーー
「これが…私?…」
鏡に映るのは、いつもの野暮ったい地味女ではなかった。
艷やかに潤った髪が綺麗に結われ、目元は華やかに際立ち、カサカサだった唇は瑞々しく。
他の人に比べれば大した事ないかもしれない…けど、まるで生まれ変わったかのように煌めいて見えたんだ。
「可愛くなったな、茅乃」
髪型を崩さないように頭を撫でてくれる秀吉さん、そしてその傍らには……
「へぇ、垢抜けたじゃねぇか。
なぁ三成」
「ええ。とてもよくお似合いですよ、茅乃様」
いつの間にか政宗さんと三成さんも居て、こちらをまじまじと見つめていた。
ギャラリーが増えてる……っ!
照れ臭さと嬉しさであたふたしていると、
蘭丸さんが満足げに顔を覗き込んできて。
「ね?俺の言った通りでしょ?」
「あ…ありがとうございます」
「それじゃあさっそくお待ち兼ねの信長様のところへ行こう。さぁほら」
もたつく私を急かすように。
皆から背中を押され、いざあの人のもとへーーー。