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【イケメン戦国】夢心地の宵

第1章 天下人の女 【織田信長】 《R18》




「また顔が下向きに萎れているぞ。今日の話し相手は土草か?」

「あっ…すみません、つい…」


自分でも気付かないうちに俯いていたようで、ほんの少し顔を上げてみるも……
それから自然と会話が途切れ、長い沈黙が続く。
肩を並べて話をするだけでも緊張したけど、無言のままだと妙な焦りを感じてもっと緊張してしまう。
き…
気まずい……っ!


「……っ、
それにしても綺麗な景色ですねぇ。天主からだともっと見晴らし良さそう」


なんとかこの気まずさを緩和するべく、
苦し紛れに当たり障りのない話題を振ってみた。
すると、ひと呼吸置いた後……


「綺麗、か…
風情を愛でる一方、血で血を洗う争いの渦に身を置く俺を貴様はどう思っている?」

「え…と…」

「恐ろしいか」

「…いえ…そんな事は…」
 
「くだらん身分制度に囚われ、虐げられた者達の心は荒み、治安を悪化させる源と化すこの乱世…
己の領地は守れても、管轄外へ一歩出れば邪の化身がうようよ蠢いている。
そのような現状を打破し、民に平等な世をもたらす為には掲げた旗を下ろす気は無い。
鬼だ魔王だのと恐れられようとも」


紅い瞳に表れる、揺るぎない強い意思。
そうか、この人は……
私利私欲、国を支配したいが故に戦ってるんじゃない。
願っているのだ。
皆の幸せを、
在るべき人間の生き方を。

私は“織田信長”という人物のなんたるかを勘違いしていたのかもしれない。

目を逸らさず、
身体ごと向き合おうとした、時。


「居たっ!そんなところで隠れ食いなさってはいけませんよ信長様ぁぁぁっ」


声のする方へ視線をやると。
山道の彼方から、鮮やかな緑色の羽織を振り乱してこちらへ爆走してくる秀吉さんの姿ーーー
すごい…まだ探し回ってたんだ。


「ちっ、嗅ぎ付けおったか…執念深い奴よ。
逃げるぞ茅乃」

「は、はいっ」


すっくと立ち上がり、再び逃亡を図る信長様に連れられて野を走り出す。
運動不足が祟って足元がもつれ、息が切れそうなほど呼吸が苦しいけれど不思議と疲れは感じない。
心地良い向かい風ーーー

掴まれている手首が熱い。
体温のせいなのか、それとも……

高鳴る鼓動は、静まる気配が無かった。



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