第7章 ワンコ系男子。
「は~い。ストップっス。」
その声に女子たちの声が黄色く変わる。
「き、黄瀬くん!あ、朝練は!?」
女子たちはざわめき、私から離れる。
「何?俺は毎朝練習しなきゃいけない決まりでもあんの?」
黄瀬くんは私の手をひっぱり、起こす。
「そ、そんな事言ってないけど…。」
「なんで、俺が好きになった女をお前らにボコボコにされなきゃいけねぇんスか?」
黄瀬くんは周りの女子を睨みつけた。
「…。」
女子たちは黙り込んだ。
「ファンレターでは好き好き言うくせに、実際俺の事なんてミーハー心でしか見てねぇんスよね?」
「そ、そんな事ないよ!私達は黄瀬くんの事が好きでっ」
「だったら!」
黄瀬くんはかぶせるように大声を出す。
「だったら、俺の幸せ考えてくれねぇっスか?追っかけとかも正直迷惑なんスよね。やめてもらえます?」
黄瀬くんは冷たい目で彼女達を見る。
「怪我、ないっスか?」
黄瀬くんは優しい笑顔で私を見る。
「…うん。」
黄瀬くんはそのまま私の腕を掴んで歩きはじめた。
私はその手を振り払った。
「…悪かったっス。また俺のせいで。」
「…あの、黄瀬くん」
「涼子ちゃんっス。」
「涼太くん。」
「…!?」
黄瀬くんは驚いた顔でこちらを見た。
「助けてくれて…ありがとう。」
私は黄瀬くんの手を握った。
「…!!…うん。」
"男"はみんな最低だって思ってた。
でも、それは偏見で…。
まだ好きにはなれない。
でも…ゆっくりと…
彼に歩み寄りたいと
私は…
そう思った。
=FIN=