第4章 コウカンニッキ。
それから、私は遠くの学校へ転勤した。
彼がその後どうなったかは知らない。
交換ノートだって彼が持ったままだった。
そんな事も忘れかけていた頃の話。
私は既に教師暦6年目を迎えようとしていた。
年齢も新任の時よりずっとずっと歳を取った。
でも、教師はとても楽しかった。
今日は新しく新任の先生がやってくるそうだ。
私はなんだかワクワクしていた。
だって、私が新任になった年に高校生だった子達が
社会に出る年だったから。
ぼやっと花宮くんのことも思い出していた。
"ガラ"
職員室に校長が入ってきた。
「えー、今から職員会議をはじめる。今日はまず新しく来た新任の教師を紹介する。君、入りたまえ。」
校長がそう呼びかけると、
一人の男の子が入ってきた。
「…あ。」
開いた口がふさがらなかった。
「はじめまして。今日からこちらでお世話になる花宮真です。宜しくお願いします。」
丁寧に挨拶をし、頭を下げる花宮真が居た。
それから職員会議が終わり、
花宮くんは私の席へやってきた。
「久しぶり、先生。」
「久しぶり。花宮くん。」
私がそう言って笑うと、花宮くんはノートを差し出してきた。
「次、先生の番だぜ。」
あの時の交換ノートだった。
「…懐かしいなぁ。」
私はパラパラとノートをめくった。
「なぁ、如月。改めて言わせてくれよ。」
「…ん?」
「好きです。俺と付き合ってください。」
花宮真は私を真っ直ぐ見てそう言った。
「はい。」
私も笑顔でそう応えた。
交換ノートの最後のページにはこう書かれていた。
『必ず迎えに行く。必ず幸せにする。』
私はその時が止まっていた交換ノートに
新たに返事を書きはじめた。
あなたに送るメッセージ。
=fin=