第3章 ヲタク男子。
「うぉぉぉぉ!!!りんりんの握手券当たったぜぇぇぇ!!!」
真後ろの席で大きな声で騒いでいるのは
バスケ部の宮地清志だ。
「お!宮地やったじゃん!それって結構レアな握手会だろ?」
「そうそう!3分間も話せるんだぜ!めっちゃうらやましいだろ~!?」
「オークション掛けたらめっちゃ儲かるんじゃね?」
「バカっ!そんな事するわけねぇだろ!轢き殺すぞ!」
宮地くん達は大騒ぎしている。
そう。
そのりんりんが、実は目の前の席に座っているとも知らずに…。
そう、私はアイドルなのだ。
もちろん、アイドルであることは皆には隠している。
…というか気付かれていない。
なぜなら、今の私は
極厚レンズのビン底眼鏡に
天然パーマでモッサモサした
ださーい女子だからだ。
私は黙って後ろの席の会話に聞き耳を立てていた。
「えー、宮地くんりんりん好きなの~?超ショックー!」
クラスの女子が宮地くんに絡む。
「あ?ショックってなんだよ。轢き殺すぞ。」
宮地くんはクラスの女子を睨みつける。
「え~!だってぇ、りんりんってモロブリっ子系アイドルだしぃー、微妙じゃない?」
女子は負けんと宮地くんに食ってかかる。
(っう。私、女の子にそんな風に思われてるんだ…。)
「バァカ!わかってねぇな!りんりんはな!頑張り屋さんなんだよ!俺は、ずっと見てきたから知ってるんだ!」
宮地くんは勝ち誇ったようにそう言った。
その言葉が、なんだか心地よくて
心がぽっと温かくなった。