第1章 悲しい過去
瞼の奥が眩しい。
薄眼を開けると、直射日光。目が痛いし嫌でも目が醒める。
上半身を起こすと、木刀を側に置いて眠るアオネさんがいた。
…………アオネさん?
「なんでぇ!?」
俺の大声でアオネさんは目を覚ました。ゆっくり体を起こして、俺を見る。その目はとても悲しい色だった。
「アオネさん、俺、どうなったの?」
アオネさんは俯いた。
「母さんは?ナツは?父さんは?」
アオネさんは答えない。
「村はどうなったの?」
アオネさんは目を閉じた。
「アオネさんっ!!」
聞く事を放棄されたように感じて思わず怒鳴ってしまったが、アオネさんに限ってそんな事はない。
アオネさんは相変わらず目を合わせてくれないが、ややあって首を横に振った。
その意味を俺は理解出来なかった。
木刀を近くに引き寄せて持ち上げる。昨日もらったばかりの新品のはずが、既に汚れが目立って傷もある。
自分の服も見下ろす。イズミンがくれたシンプルなTシャツ。これも汚れて糸のほつれも見える。
「アオネさん、俺達、どうすればいいの?」
アオネさんは答えてくれた。
「この山を超えると村がある。そこへ行こう」
俺は頷いた。