第5章 旅立ち
私が9歳の時、村のムードメーカーだったタナカさんとニシノヤさんが、行方不明になりました。
原因はわかりません。
人伝えに聞いた事ですが、2人は窓から家を出たらしいです。寝巻きのまま、何も持たずに居なくなりました。
必死に捜索しましたが、村の中にも外にもおりませんでした。
キノシタさんが仕事ついでに聞いて回ってくださったようですが、見かけた方はいらっしゃらなかったようです。
ああ!暗い事を書かないって書いたばかりなのに、暗い事を書いてしまいました!すみません!
2人が居なくなってからは、皮肉なことに平穏に日々が過ぎました。
ヒナタの身長の伸びはアオネさんより悪いですが、私より大きいです。肩幅も出てきて、服の新調をしなくては。
アオネさんとも、最初の頃と比べるとお話できるようになりました。相変わらず無口ですが、ちょっとお茶目な一面も見受けられました。
ヒナタの悪夢の話はパタリと消えました。夢蟲の一件から、もう大丈夫なのでしょうね。
ヒナタが烏野村へ来た時に着ていたTシャツ、もう小さいです。ハンカチにするにはいい素材なので、リメイクしてしまってもいいでしょうか?思い出の品だと聞いておりますので、大切にしてほしいです。
今日も地下倉庫の、忘れられた鎧を拭こうと思ったのですが、その必要はありませんでしたね。
彼らがまた、旅に着て行ってくれましたから。